汚染調査の必要性
米国やドイツでは以前から地質汚染が社会問題となっており、汚染に関して責任のある関係者にたいして極めて厳しい責任を追及する法律(厳格責任主義)が既に整備されています。米国ではスーパーファンド法、ドイツではドイツ連邦土壌保護法がこれにあたります。こうした厳しい法律のもとでは、現在の土地の所有者は、汚染の事実を知らずに土地を購入したとしても、土地の浄化責任から逃れることは容易ではありません。従って、米国やドイツにおいては、土地を売却する際や、改変の機会を捉えて汚染の有無をチェックすることが、企業にとって常識となっています。
さらにすでにスタートしている環境マネジメント・監査の国際基準ISO14000シリーズの中のサイトアセスメント(ISO14015)では土壌汚染対策が重要な項目の一つになっています。
日本でも地質汚染が次々と顕在化しています。汚染の事実を知らず、うっかり汚染地を購入した結果、将来思わぬコスト(損害賠償費用、汚染浄化費用、会社のイメージダウンによる損失)を背負う羽目になる可能性があり、場合によっては企業経営に甚大な影響を与えるかも知れません。
また、たとえ法規制が米国やドイツほど厳しいものにならなかったとしても、企業にとっての大きなリスクであることに変わりありません。汚染の事実を隠して土地を売ることは社会的に許されなくなっています。過去に汚染物質を用いて事業を行っていた場合、汚染地とは知らずに売ったとしても、知らなかったという抗弁は通用しなくなる可能性があります。米国では、十分な汚染調査の結果に基づいて「汚染なし」の判断を下していない限り、知らなかったという抗弁は通用しません。
土地を売買する場合には、その土地が汚染されているかどうかを予め調査しておくことが欠かせません。
一般に、地質汚染は表面から見ただけではわかりません。 数十年前の行為、あるいは記録に残らない行為(例:ドラム缶が倒れ有機溶剤が漏洩)に起因するケースも多いのです。従って、工場、貯蔵所、廃棄物置き場であった土地でも汚染があるか否かを事前に調査しておくことが大切です。
地質汚染事例
1. 東京都江東区の事例
東京都江東区の事例昭和50年代に発見された地質汚染。工場で発生した六価クロム鉱滓を利用して埋め立てた土地を購入し住宅地として開発した後で問題が発覚。現在322ヶ所で汚染が確認されている。対策は現在でも続いており、費用の合計は200億円以上と推定される。
2. 君津市の事例
工場付近の井戸から塩素系の揮発性有機化合物が検出されたのが発端。主たる汚染源として電子部品工場が確認された。汚染は地下水に達し、下流2Km程度まで広がっていた。
3. 福山市の事例
1991年10月に工場跡地を再開発中に重金属等による汚染が発見された。1994年5月には汚染対策費として約111億円が計上された。
4. 兵庫県の事例
旧河川の氾濫原の豊富な地下水がトリクロロエチレンで汚染されていることが水道水質スクリーニングで発見された。上流の電機工場が汚染源と見られる。
5. 豊中市の事例
完工寸前のマンションで土壌・地下水汚染が問題となり、開発業者の判断でマンションを取り壊した。
<<引用資料>>
事例1. 東京都資料
事例2. 日本地質学会報告書
事例3. 日本経済新聞1994.4.27
事例4. 平田健生編著土壌・地下水汚染と対策
(社)日本環境測定分析協会平成8年1月25日発行
事例5. 各種新聞報道
地質汚染の調査方法
地質汚染の調査は、資料調査・ヒヤリング、表層・浅層調査、深層調査の三段階に分けて行うのが効率的です。
■ ヒヤリング
先ず、資料調査・ヒヤリングによって汚染の可能性を検討します。このポイントは、土地の過去における使用歴、廃棄物処分状況、汚染対象物質の取り扱い状況、地形・地質、洪水・火災などの被災、周辺井戸情報などです。この段階で汚染がありえない事が確認できればこれで調査が終了する場合もあります。
■ 表層・浅層調査
資料調査・ヒヤリングで汚染がないことが確認できない場合には、次に表層・浅層の調査を行います。浅層とは大体地下10m程度です。一般に、重金属やシアンによる汚染は地下数m、深くてもせいぜい5m程度です。油燃料など水より比重が小さい揮発性有機化合物は地下水まで達し、比重が水より大きいトリクレン(トリクロロエチレン)、パークレン(テトラクロロエチレン)などの揮発性有機塩素化合物は地下水中を沈降し汚染が拡大し、水平方向にも拡がります。揮発性有機化合物は地中で気化して表層にまで達する場合が多いので、ボーリングバーとガス検知管を用いた表層ガス調査を簡便に行うことができます(低感度法)。
■ 深層調査
浅層調査で汚染の深度が確認できない場合はさらに深層の調査を行う必要があり、調査は大掛かりとなります。深層調査技術は大掛かりであるだけに、調査場所に制約があります。効率よく調査するためには浅層と深層はそれぞれに適した技術を使い分けます。
■ ボーリング(サンプリング)技術の選択
ボーリング(サンプリング)技術には手軽な順にハンドオーガーボーリング(手掘り)、機械式簡易ボーリング、機械ボーリングがあります。手掘りは費用が安く済みますが、多大な労力を要する上に精度が非常に低いのが問題です。機械ボーリングは井戸や温泉の掘削、大規模な地質調査を目的として開発された技術です。汚染の深層調査に適していますが、必ずしも地質汚染調査を考慮した技術ではありませんので地質汚染調査で重要となる浅層調査に対しては効率が良くなく、狭い場所では作業が出来ません。
そこで手掘りと機械ボーリングの中間に位置し、手軽で効率的な技術として開発されたのが機械式簡易ボーリングで、特に地質汚染調査のために開発されました。これは地層汚染診断・修復簡易化研究会(SCSC※)によって開発され、環境省の土壌・地下水汚染対策指針にも平成6年11月以降取り入れられ広く普及しています。